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MASTER'S VOICEつくり手の声Review

Case.4

「ひのはらファクトリー」代表取締役
吉田光世

東京の村から、
世界初“木”の焼酎が誕生

日本固有の木であるヒノキを原材料にした【世界初 木の酒】ひ乃はら物語[HINOKI]が発売されたのは、2023年2月2日のこと。檜原村の前村長が2003年に掲げた「檜原村で、村の資源を活かした焼酎を製造したい」という想いが、20年の時を経て実現するまでの道のり、メイド・イン・ヒノハラの焼酎造りにかける想いなどを、じゃがいも焼酎製造工場兼店舗「ひのはらファクトリー」代表取締役で杜氏を務める吉田光世さんに伺いました。

メイド・イン・ヒノハラの焼酎第一弾は、20年以上の歳月をかけて実現

檜原村で焼酎造りの構想がスタートしたのは、なんと、20年以上も前のこと。当時、村長になったばかりの坂本義次さんが、村の地形に適したじゃがいもの栽培が盛んであったことから、じゃがいも焼酎を造ることを思い立ったのだという。

吉田さん:「坂本前村長は檜原村の原材料を使い、檜原村で焼酎を造りたいという思いを強く持っていました。しかし、酒造免許の取得は条件面でハードルが高く、なかなか実現に至りませんでした」

じゃがいも焼酎工場兼店舗「ひのはらファクトリー」代表取締役で、杜氏を務める吉田光世さん。

長年にわたり檜原村産のじゃがいもを使用した焼酎造りを外部委託していたが、2019年に地域経済を活性化させるための国家戦略特区の焼酎特区として認められ、ようやく、檜原村に焼酎製造工場「ひのはらファクトリー」が誕生した。

しかし、工場があっても杜氏がいなければ焼酎は造れない。そこで、吉田さん自らが「青酎」で有名な東京都青ヶ島へ行き、焼酎造りを学んできた。

吉田さん:「私はお酒が大好きなので、じゃがいも焼酎は私好みの味わいです(笑)。でも、正直なことを言えば、檜原村の村民の方々が育てたじゃがいもと檜原村の美味しい水があれば、自ずと美味しいじゃがいも焼酎ができます。

現在は、『ひのはらファクトリー』で、私と数名のスタッフでじゃがいも焼酎を製造していますが、原材料のじゃがいもは重たいので、檜原村での焼酎造りは体力勝負です」

「ひのはらファクトリー」のカフェスペースから、じゃがいも焼酎の製造工場を見学できるようになっている。

世界初! ヒノキの香りに癒される木の酒の誕生

【世界初 木の酒】ひ乃はら物語[HINOKI](25度/500ml ¥11,000)。「ひのはらファクトリー」で年間を通じて購入可能。ヒノキの箱にはメッセージの刻印もでき、贈答用にも最適。

ひのはらファクトリーで製造するじゃがいも焼酎「ひ乃はら物語」に、ヒノキの単式蒸留焼酎の原酒をブレンドしたものが【世界初 木の酒】ひ乃はら物語[HINOKI]だ。

吉田さん:「2022年9月に、東京都立産業技術大学院大学の板倉宏昭教授の研究室から前村長の坂本さんに、『木のお酒を造りませんか』という連絡が入り、私どもに製造のご相談をいただいたのが、【世界初 木の酒】ひ乃はら物語[HINOKI]誕生のきっかけです。

木のお酒と聞いて最初は私も驚きましたが、今手掛ければ世界初として売り出すことができると知り、ぜひ実現させて、世界中の人に檜原村を知っていただきたいと考えました」

じゃがいも焼酎「ひ乃はら物語」(25度/500ml ¥2,420)。メイド・イン・ヒノハラの焼酎造りが20年以上の時を経て実現したことから、“物語”と命名したという。

木をお酒にする方法を詳しく見てみると、これなら、ひのはらファクトリーでも造ることができそうだと判断し、世界初を名乗るためにスピード感を持って製造をスタート。

檜原村は面積の約9割が森林で、檜原産材を供給するインフラも整備されているため、原材料となるヒノキの調達には困らなかった。

吉田さん:「焼酎に使うのは、建材には使用できないヒノキなので、資源の有効活用ができます。ヒノキをすり潰してセルロースを取り出して蒸留すると、エッセンシャルオイルのようにいい香りがします」

「ひのはらファクトリー」では、焼酎のほかにヒノキの工作キットやヒノキのエッセンシャルオイルも取り扱っているが、実は、焼酎とエッセンシャルオイルには、蒸留して造るという共通点がある。

吉田さん:「そもそも、私が檜原村に拠点を移したのは、長期的にエッセンシャルオイルを造り続けるために、“原材料の隣に住もう”と決めたからです」

ラベルには、檜原村に住む写真好きな方の作品が使われており、「檜」の文字はじゃがいも焼酎造りの提案者である坂本義次前村長の筆によるもの。

その決断が焼酎造りへと繋がっていくと当時は思ってもいなかったが、吉田さんは今、“ヒノキを世界へ”という思いを抱きながら、ヒノキを原材料とするエッセンシャルオイルと焼酎造りに励んでいる。

吉田さん:「個人的なことですが、コロナ禍以前に体調を崩した際、私はヒノキのエッセンシャルオイルにとても助けられ、このオイルを造る人生は楽しいだろうなと思いました。

コロナ禍に入り、知人にヒノキのエッセンシャルオイルを贈ったところ、特に欧米の方々から『自分を癒すメディテーション(瞑想)のきっかけとしてヒノキは有効だ』などのよい反応がいただけました。その経験が、“ヒノキを世界に”という私の思いを後押ししてくれています」

もちろん、【世界初 木の酒】ひ乃はら物語[HINOKI]も海外での展開を視野に入れている。欧米ではじゃがいものお酒がカクテルベースとして使われている上、海外の展示会でも好評のヒノキが使われていることで、欧米でも受け入れられるのではと考えている。

吉田さん:「香りがとてもいいので、リラックスしたいときに呑むのもおすすめです。冷やしてストレートやロックもいいですし、ハーブとの相性がいいので、ミント、ライム、シュガーを添えたモヒート風カクテルにするのも美味しいです」

ヒノキのエッセンシャルオイル、そして、ヒノキを原材料とした焼酎。吉田さんの人生には、すでにヒノキが欠かせないものとなっている。

吉田さん:「いろんな挑戦を繰り返しながら、最終的には、檜原村に足を運んでくださる方が増え、私たちを受け入れてくれた檜原村に恩返しができたらいいなと思っています」

檜原村じゃがいも焼酎工場にカフェを併設した「ひのはらファクトリー」

じゃがいも焼酎の製造・販売だけではなく、カフェで食事をいただくことができ、店頭では檜原産ヒノキを使用した精油(エッセンシャルオイル)や工作キット、檜原村の特産品の販売なども行なっている。

ひのはらファクトリー

住所: 東京都西多摩郡檜原村小沢4023-1
電話: 042-588-5170
営業時間: 11:00〜17:00
定休日: 月・火曜日(4/29~5/6、7/19~8/31、10/1~11/30は毎週火曜日)

※祝日の場合:その翌日又はその翌々日が休館日となります。