森林循環が環境を守るとうきょうの木のはなし
多摩地域の森林には
利用期を迎えた木がいっぱい
林業が衰退する一方で、植栽された人工林は林齢を重ねていきました。木材として利用可能な林齢は、気候や生育地によって異なりますが、一般的にスギで35年以上、ヒノキで45年以上です。現在、多摩地域には約3万haの人工林があり、そのうちの約8割が昭和30年代に植栽した林齢50年以上となっています。
多摩地域の人工林は、今まさに、「伐り時、使い時」を迎えているのです。
21世紀に入って国産木材の利用推進は国や自治体の重要な政策となり、一時は20%以下まで落ち込んだ木材自給率が現在は41%(令和3年)まで回復しました。
多摩木材センター(都内唯一の原木市場)では、多摩産材の取り扱い量が平成18年度の2,900m3から令和3年度には、16,729m3まで増加しています。
利用期を迎えたスギにより花粉飛散量が増加している
スギは日本固有の樹種であり、北海道から屋久島まで広く生育します。また、材は軽くて柔らかいため加工しやすく、建築材、家具材など幅広い用途で活用できることから、戦後の造林で多く植栽されました。
ところが、スギは植えてから約30年経つと、本格的に花粉を生産します。戦後に植栽されたスギの多くは植えられてから30年以上経っているため、花粉の生産量が増加。多くの花粉症被害をもたらしています。
現在、東京では2人に1人がスギ花粉症と推定されるほど深刻な状況です。
東京都では、花粉症対策の一つとして、花粉を多く飛散するスギ・ヒノキを伐採し、花粉の少ないスギなどに植え替える「花粉の少ない森づくり」運動を進めています。
森林循環で持続可能な社会の実現
このように多摩地域の森林では成熟した人工林を使って地場産業の林業と製材業を振興し、伐採後に花粉の少ないスギなどへ植え替える、森林循環が進められています。
また、地球温暖化対策の観点からも森林循環を促していくことは大切です。樹木は成長する過程で、光合成によりCO2を吸収し、炭素として固定します。
また、木材として利用されている間は、固定した炭素がCO2として大気中に放出されないので、その分大気中のCO2は減ることになります。森林循環の促進は持続可能な社会の実現に繋がるのです。