MASTER'S VOICEつくり手の声
Case.9
株式会社アスカルデザインプロダクツ
代表取締役社長
舘野 一也
木製品は長く愛用できるのが魅力。
つくって終わりにしないために
さまざまな工夫を施す。
東京・日本橋で50年以上、住宅やビルの外壁に使われる建材のデザインなどを手掛けてきた株式会社アスカルデザインプロダクツ。2021年に、地域の方が気軽にモノづくりに触れられる場として「Made in 日本橋」を立ち上げ、木材をはじめとするさまざまな素材を使ったワークショップを開始。その経緯と、木という素材への思いを同社の代表取締役社長の舘野一也さんに伺いました。
手に取ってもらいたくて、木型という道具を作った。
舘野さん:弊社は50年にわたり、建材に特化したマーケティングや企画デザイン、原型の型などを制作している会社です。これまで培ってきた型をつくる技術を建材の分野だけでなく、他業種や一般の方にも知ってほしいと思い、まずは幾何学模様や和柄の木型をつくりました。
木型は和菓子屋でも使われていますが、一度つくると50年、100年と使い続けられることから、新規の需要が少なく、木型職人が減ってしまったとも言われています。作り手の立場としては、長く使ってもらえることが木型の大きな魅力だと感じると同時に、専門の技術を絶やしたくないという思いもありました。
実際に作りはじめてみると、木型を探している方は思った以上に多く、これまでに陶器のカップ、備前焼のボタンやアクセサリー、瓦、仏具など、さまざまな形で使っていただいています。一番驚いたのは、パティシエの方がケーキづくりに使ってくださり、世界大会で20年ぶりに日本チームが優勝したことです。
とうきょうの木を使いたくて、アクションを起こした
「Made in 日本橋」では、モノづくりをしたい一般の方への工房の貸し出しと、木やガラス、錫などを使ったワークショップを定期的に開催している。
舘野さん:当初は、日本橋周辺のイベントやお祭りで配る木札を制作していました。日本橋のある中央区は檜原村に「中央区の森」を持ち、村との交流も続いています。そうした背景を知るうちに、地域とのつながりをより深めたいという思いが強くなり、せっかくなら「東京の木で木札をつくりたい」と思うようになりました。でも、いつもお世話になっている新木場の材木屋では、木材の産地を指定するのが難しく、多摩産材情報センターに相談して「とうきょうの木」を扱っている材木屋を紹介してもらいました。
木材の産地がはっきりしていると、参加者の受け止め方は大きく変わります。たとえば、ツリータワーのワークショップで「今回の材料は檜原村の山で育った、とうきょうの木だよ」と伝えるだけでも、参加者の興味の持ち方が違います。その上で「針葉樹と広葉樹にはこういう違いがある」と具体的に話すと、より理解が深まるように感じています。
木の知識を得た後は、これまで風景の一部でしかなかった、街路樹や公園、神社の杉の木にも自然と目が向くようになると思いますし、東京の森への興味を持つきっかけにもなっていくのではないでしょうか。
「木が好き」だから、木を使い切りたい
国産木材でもどこの地域の木を使うのか。それを意識するようになった背景には、福島県に移住して木こりになった高校の同級生の存在があるそう。
舘野さん:「木の消費量が多い東京には、全国からたくさんの木が集まってくる。そこで終わりにせず、その木が地方の山で育てられ、伐採されて届いていることまで伝えてほしい」という友人の言葉を、今も心に刻んでいます。
私たちはデザイン会社で木を使う立場です。友人のように林業に従事する方、製材所、材木店、木に関わるたくさんの人がいるから、私たちの手元に木材があります。多くの人が繋いできた木という材料を、私は余すところなく使い切りたいと常々思っています。それはどうしてかと考えると、前述の方々への感謝に加え、私自身、木が好きだからという答えに行き着きます。一つ一つ木目が違い、質感や香りも違う。木が好きだからこそ、その木だけが持つ個性を活かしきりたいんです。
私事ですが、3人の息子たちの勉強机は、それぞれ異なる樹種の天板を使ってDIYしました。その時にも将来、息子たちが家を出る時にはリメイクして、使い続けてもらいたいと考えました。どんな時でも、木を使い切ること、そして長く使い続けることを仕事や暮らしのなかで大切にしていきたいと思っています。
つくることを楽しみ、使うことで思い出をつくる
「Made in 日本橋」のモノづくりでは、“つくっただけで終わらない”工夫が施されている。
舘野さん:三角形の木のパーツを組み合わせてつくる『イロドリキーホルダー』は、アロマストーンのパーツを加えることで、香りと一緒に持ち歩いてもらえるのではと考えました。『ツリータワー』は完成後、アクセサリー掛けとして使えますし、『リバーシ』もパーツの色塗りをした後にゲームとして楽しんでいただけます。
木は長く使えるものだからこそ、つくって終わりではなく、その後もワクワクした気持ちで使い続けられるようにと考えています。そして、その時間が、その人にとっての“木との思い出”になればいいな、という思いもあります。
ここでの楽しい経験が、東京都心の暮らしと多摩地域の森林を結びつける機会になればと願っていますし、モノづくりをきっかけに木の住宅などに目を向ける方々が増えてくれたら企業としても嬉しいです。
株式会社アスカルデザインプロダクツ/Made in 日本橋
東京都中央区日本橋堀留町1-2-1 日本色素本社ビル3F
TEL:03-3661-1889