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MASTER'S VOICEつくり手の声Review

株式会社Tree to Green代表取締役CEO 青野 祐介さんのメインビジュアル

Case.8

株式会社Tree to Green代表取締役CEO
青野 裕介

時代とともに変化しながら
森林とモノづくりを1本の道で繋ぎたい。

3つのKOUSAKU「耕作」「工作」「幸作」を柱に、人がより人らしく元気で心地よく暮らせる社会を目指している株式会社Tree to Green 代表取締役CEOの青野裕介さんに、森林に貢献するための活動について伺いました。

国産材への理解が深まり、木を求める人が増えた

環境に関することで起業をしたい。株式会社Tree to Green代表取締役CEOの青野裕介さんが温めてきた思いを実現させたのは、2013年のことだった。

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株式会社Tree to Green代表取締役CEO 青野裕介さん。

青野さん:環境に関する分野はさまざまありますが、自分の原体験などから、モノづくりから森林へと繋がるフィールドで起業をしたいと考えました。ちょうど2人目の子どもが生まれたタイミングでもあり、子どもたちの世代に良い環境を残したいという思いも強くありました。

起業当時の国産材に対する世間の反応は、「手間がかかる」「金額が高い」といったものが大半で、私たちが取り扱う木製品についてお話する前に、まず国産材の性質やその良さをお伝えする必要がありました。

ところが、2015年にSDGsが誕生して社会全体の環境への意識が高まり、2019年に始まったコロナ禍で在宅時間が増え、多くの人が身近なものに心地よさを求めるようになりました。その結果、その頃から、国産材の良さをお伝えする際に頂戴する皆様の反応に変化がありました。そして、自ら木製品を選択する企業やユーザーが増えてきていると感じています。

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オフィスには、国産材の付加価値を高める取組みとして制作したプロダクトの数々が展示されている。

木製品を消費する森林と都市部まで、道を繋げたい

国産材への消費者の理解が進み、時代と共にTree to Greenが向き合う課題も変化しているという。

青野さん: 起業当初は、ユーザーに対して「国産材はいいですよ」と伝えることが私たちなりにできる森林への関わり方でした。現在はそこから一歩進み、木製品の消費地である都会を「川下」とするならば、私たちはその源流である「川上」、つまり森林へと少しずつ近づいて行っています。

その一つが、2022年から運営している長野県木曽町の家具工場で、より森林に近い場所でモノづくりのできる拠点を構えました。

最終的な目標は、森林と都市部を1本の道のように繋げることで、今後は、林業を営まれる方々とより直接的なやり取りができるように、丸太の加工ができる場所を持ちたいと考えています。

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絵本に登場する椅子を作れる工作キット「どうぞのいす」は子ども向けワークショップで人気。
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国産材に親しむきっかけをつくるワークショップグッズたち。
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木製品に触れるきっかけをさまざまな形状で提供するそう。
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青野さんの自宅にも採用した国産材の合板は使い勝手がよく、細い木の活用にも繋がるという。

また、近年力を入れているのが国産材の合板です。ひと昔前まで、合板には品質がやや劣るイメージがありましたが、私どもで扱っている国内メーカーが国産材で作る合板は品質がよく、薄い板を交互に重ねることで反りや割れがなくなるので非常に扱いやすくて大型の家具などにも使えます。

合板用の木材は、大根の桂剥きのように丸太から帯状に薄く剥いていくので、これまで使い道のなかった径の小さな原木が活用できる点も魅力です。今後、どんどん普及させていけたらと考えています。

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園に導入された合板を使用した什器。

木育活動や森林を身近に感じる原体験を提供したい。

企業の内装や住宅の家具などから日常使いできる木製品まで、さまざまな形のモノづくりを通じて、サスティナブルな森林活用を目指している。

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Tree to Greenの木育活動では、大きなノコギリで丸太を切るところから始めることも多い。
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ホンモノに触れる機会を積極的に提供する。
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公共施設のプロダクトを手掛けることも多い。
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地域産材を活用した公園のパーゴラとベンチ。
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子育て支援センター内の大型遊具。
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園内の木質化を園と一緒に考えている。

青野さん: モノづくりの中で、私たちが起業当初から大切にしているのが、子どもを対象とした木育活動です。保育園や学童施設等で開催するワークショップでは、材料を組み立てるだけのモノづくりではなく、丸太をノコギリで切るところから始めることもよくあります。

木育活動では地産地消を大切にし、開催地が東京都なら“とうきょうの木”を使います。実際に木に触れながら、「これは多摩地域で育った木でね」とか「森林があるから美味しいお水が飲めるんだよ」と話すことで、ただ理解するのではなく、一緒に森林を活用する仲間のような関係になれると感じています。

渋谷区の保育園では、丸太を切り、カンナで削り、最終的にはドミノを作るということを一年がかりで行いましたし、木育活動を通じて「園のお泊まり保育を森のある多摩地域でやりたい」という声を頂戴したことも何度かあります。モノづくりやお泊まり保育が原体験となり、未来の森林活用にもいい影響をもたらすだろうと信じています。

森林にいると別人格のようにおおらかになれる

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「継続的に森林へ行き、言葉だけでは理解できない感覚を実感してほしい」と青野さん。

子どもはもちろん、大人にも森林に足を運んでほしいと青野さんは言う。

青野さん:仕事ではありますが、私は毎週、森林へ行っています。頻繁に通っているうちに気づいたのは、都会にいる時とは違う人間になったかなと思うくらい、森林ではおおらかになるんです。都心では公共交通機関の乱れが数分でも気になりますが、森林のある場所では30分遅延しても気にならないです。それどころか、毎回、スッキリとした気持ちになって帰ってきます。

都心に住んでいる人でも、車なら1時間ちょっとで多摩地域の森林に行けます。そのわずか1時間でコンクリートと緑の比率が逆転する。これほどの劇的な変化を継続的に頻度高く体験すると、日々の暮らしの快適さまで変化するので、ぜひ試してみてほしいです。

最初は何をしようか迷うかもしれませんが、継続的に森へ足を運ぶうちに人とのつながりが生まれ、次第にそこが自分の新しい拠点になっていきます。まずは森林へ行ってみる。そこが始まりだと思います。

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とうきょうの木の原木の形をそのまま活かした「枝ベンチ」。
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木で遊び道具をつくる体験も提供する。

株式会社Tree to Green
〒151-0064 東京都渋谷区上原1-30-2 野村ハウス2階
TEL:03-6447-4770