学校連携とうきょうの木 学び場プロジェクト
2025年5月から約半年間にわたって取り組んできた学校連携 とうきょうの木 学び場プロジェクトのレポートは、
いよいよ最終回を迎えます。完成した作品の展示発表や講評会の様子をお届けするとともに、
プロジェクトを振り返って、学校法人桑沢学園 東京造形大学 室内建築専攻領域の酒匂克之教授と長岡勉准教授に
ご意見・ご感想を伺いました。
〈 作品展示 〉
学校連携 とうきょうの木 学び場プロジェクト
「モクモク モリモリ ヌクモリ」展
を開催
“とうきょうの木” を活用して、「ぬくもり」をテーマに制作した東京造形大学 室内建築専攻領域の有志12名の作品が11月に完成。それらの作品は、東京都内2カ所でお披露目されました。
| 展示① | 会期: | 11月7日(金)〜19日(水) 会場:多摩市立中央図書館
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| 展示① | 会場: | 多摩市立中央図書館 |
| 展示② | 会期: | 11月27日(木)〜12月9日(火) |
| 展示② | 会場: | リビングデザインセンターOZONE |
| 展示③ | 会場: | 6階パークサイドスクエア、7階 TOKYO MOKUNAVI |
“とうきょうの木”でつくった作品を市民に愛される多摩市立中央図書でお披露目しました
最初に、11月7日から19日にかけて多摩市立中央図書館にて「モクモク モリモリ ヌクモリ」展を開催し、講評会も行いました。
同図書館は、2023年7月に移転オープンしてから、約1年ほどで来館者が100万人を達成。幅広い年齢層の方に愛されているこの図書館で、作品を通じて“とうきょうの木” の魅力を発信しました。

図書館の1階と2階をつなぐ、レンガの階段を利用した
ステッププラザで作品展示と講評会が行われた。

緑豊かな多摩中央公園内にある、
多摩市立中央図書館の外観。

「モクモク モリモリ ヌクモリ」展の
ポスターとリーフレット。
〈有志12名による、
「ぬくもり」をテーマに制作した作品〉
約半年間にわたる、学校連携 とうきょうの木 学び場 プロジェクトでの体験から学んだことや感じた想いをもとに、 “とうきょうの木”を活用して作品制作に取り組みました。2メートルの角材を用いて、創意工夫のもと、多彩な造形の作品が生まれました。各々の作品に対するコンセプトをご紹介します。

「木の間(このま)」川出 怜奈
スノコのように組まれた木材が互いに支え合いながら、本をやさしく受け止める、木のぬくもりと構造のリズムが感じられる本棚です。スノコ状の板材は、2つのパーツに分かれていて取り外しが可能です。

「紡木(つむぎ) 」キム チヨン
たくさんの円盤状の木を糸でつなぎ合わせて、人が腰かけられる木製シートを制作しました。さまざまな向きの木目と木をつなぐ糸が合わさり、温かみのある豊かな表情を生み出します。

「木漏れ日」田上 蒼志郎
使い方によって、光り方が変わるテーブル兼照明です。普段は辺りを照らし、中央の穴を物でふさぐと、木の反射光が足元を柔らかく照らします。森の中の木漏れ日を、木と木の隙間から漏れる光で表現しました。

「杉輪椅子」栂野 葉流
角材をそのまま利用して制作した椅子です。年輪の見せ方や、木目にこだわってつくりました。展示では、普段の生活ではあまり見ない木の量感と、その座り心地を楽しんでもらえたら嬉しいです。

「もくハグ」原ひかり
本を読むときに抱きしめながら、木の香りや木目の美しさを肌で感じられる、卵形の子ども用家具です。最初に角材を接着して正方形の板材をつくり、それを円状に削り出して成形しました。

「 TURN 」永瀬 瑠輝
旋盤加工によって生まれる回転体は、木材に新しい印象を与えます。年輪とは異なる方向に削ることで新しい模様が生まれ、旋盤ならではの加工面が肌触りとして現れます。

「木目座(もくめざ)」藤田 輝
年輪の優しさとぬくもりを日常に運ぶ座卓・座椅子です。日本の床座文化に根差した「小さな舞台」のような形で、木を抱擁するような心地よさを感じてほしいという思いで制作しました。

「木車(きしゃ)」松田 京悟
木に触れて遊び、座って本を読めるおもちゃの汽車のようなものをめざしました。座って動かしたり、くつろいだりすることで、木のぬくもりをダイレクトに感じることができます。

「杉板Aスツール」三野 佑己
木目と節の表情が豊かな、高さの異なる3サイズのスツールです。踏み台やちょっとした腰掛けとして、お気に入りの小物を飾るディスプレイ台などとして、木のぬくもりが暮らしの多彩な場面に優しく寄り添います。

「木を束ねて」美谷島 健人
木がもつ年輪の温かみを束ね、座るための形態へと再構成した椅子です。堅さのなかにどこか柔らかさのある、座るという日常の行為に素材の温度を伝えるための形をめざしました。

「ヒモロギ」村田 良輔
神様が宿る神聖な場「神籬(ひもろぎ)」から発想して、仮説的な領域をつくりました。木を重ね合わせることで強度が高まり、台として機能します。木口すべてに年輪の表情が見えるように材料を使いました。

「となり灯(び) 」リク ウゴウ
一本の木材から構成して、廃材を最小限に抑える設計を考えた照明一体型サイドテーブルです。灯りと天板のあいだに生まれる余白に書籍を置き、光による「閲覧の場」の再編を試みました。
〈完成した作品のプレゼンと
講評が⾏われました〉
12名の学生が作品に対するコンセプトを発表したあと、酒匂先生と長岡先生、TOKYO MOKUNAVIから参加の3名による講評が行われました。そのなかからいくつか講評の内容をご紹介します。

原 ひかり「もくハグ」
講評
「思わず触れたくなる、なでたくなるような人との関わりを促す形を追求している点がいいと思います。」(長岡先生)

キム チヨン「紡⽊」
講評
「角材を薄く板状に切り出すときに、木目がいろいろな方向に向いてしまうことを逆に面白がって、木目の遊びを取り入れているところや、糸の編み方や色なども工夫でき、多様な可能性が感じられます。」(酒匂先生)

栂野 葉流「杉輪椅子」
講評
「多方向から座れる、ジャングルジムなどの遊具のようにアクティブに人と関われるのが魅力だと思います。」(長岡先生)

永瀬 瑠輝「TURN」
講評
「バランスをとるのが難しいけれど、子どもが遊ぶ用に裏面も座れるようになっている。大人が使っても楽しく、新しい家具としてのチャレンジ精神がいいと思います。」(酒匂先生)

三野 佑己「杉板Aスツール」
講評
「人が座るだけでなく、ものを置く台としても機能して、持ち運びも容易にできる。家具でありながら、実用性の高い道具としても優れている点が素晴らしいと思います。」(⻑岡先生)

藤田 輝「木目座(もくめざ)」
講評
「あぐらをかいて楽に座ることができ、低い目線で人と話をしたいときにも最適な家具だと思います。高さ設計もちょうどいいですね。」 (酒匂先生)

「今回、「ぬくもり」をテーマにした作品制作を通じて、 “とうきょうの木”の可能性をいろいろな表現で見せていただき、感銘を受けました。この展示がきっかけとなり、東京の山や“とうきょうの木”に興味をもってくださる方が増えたら嬉しく思います。」

「さまざまな場所への見学や制作を通じて、 “とうきょうの木”の香りや手触りを実際に体感されて、多彩な魅力を感じていただけたのではないかと思います。今後の製品づくりにも、ぜひ“とうきょうの木”を活用していただけたらと願っております。」

「MOKUNAVIのショールームで見て感じ取ったものを反映された作品がいくつもあり、嬉しかったです。みなさんは普段は室内建築を学ばれていると思いますが、日常にすぐ取り入れられそうな身近に感じられる作品が多く、どれもとても素敵でした。」
リビングデザインセンター OZONEの展示空間のコンセプトは「広場」。
約半年間、取り組んできた様子を収めた写真も展示し、プロジェクトの集大成を発表しました
多摩市立中央図書館での展示に続いて、 11月27日から12月9日まで、東京・新宿のリビングデザインセンターOZONE6階のパークスクエアと7階のTOKYO MOKUNAVIの2つの会場で作品の展示発表を行いました。
東京造形大学 室内建築専攻領域の酒匂先生と長岡先生、12名の有志が意見を交わしながら、来館者の視線の流れに配慮した空間構成を検討し、作品の配置を考えました。 作品が互いに響き合い、座る人同士が自然と会話が生まれるような楽しい雰囲気の展示空間が完成しました。
“とうきょうの木” が茂る山林に身を置いているかのような、心地よい空間が広がる。
TOKYO MOKUNAVIの一角にも、グリーンのカーペットを敷いて作品を展示しました。
作品の向きや高低差などを考えながら場所を決定していく。
TOKYO MOKUNAVIの一角にも、グリーンのカーペットを敷いて作品を展示しました。
長岡先生と一緒に、ひとつの空間の中でどのように作品を配置するか話し合っているところ。
パークスクエアの展示では、酒匂先生のプロジェクトへの想いや、これまでの見学や体験、制作 風景の写真をパネルにして紹介しました。
プロジェクトのフライヤーを載せているのは、川出怜奈さんの作品「木の間(このま)」。
多摩市立中央図書館の展示のときと同様に(一部の作品をのぞいて)、来館者に作品に座ってもらい、“とうきょうの木” のぬくもりや手触りなどを体感してもらいました。
酒匂先生と長岡先生も、“とうきょうの木”を使って作品をつくりました。本を立てかけられるブックシェルフ兼ベンチです。
最後に記念撮影を行いました。作品展示の達成感と安堵が広がり、 笑顔があふれます。
プロジェクトを終えて
こうしてすべての作品を見ると、学生たちが実に多様な考えで制作してきたことがよくわかります。同じところに行き、同じものを見て、同じ材料で一緒に制作してきましたが、ひとつとして同じ視点はありません。この取り組みでは、“とうきょうの木”の魅力を伝えるという姿勢で取り組んできましたが、その魅力に加えて“つくる人”の魅力が引き出されたように思います。もしかすると、それが“ぬくもり”というものなのかもしれません。このプロジェクトに参加した体験価値は彼らにとって、とても大きなものになったと感じています。ご協力いただきました多くの方に感謝いたします。ありがとうございました。
学校法人桑沢学園 東京造形大学
室内建築専攻領域 酒匂 克之教授
“とうきょうの木”を活用して、その魅力を引き出した作品をつくり、どのような空間を生み出せるかと思い描きながら制作を進めてきたと思います。2つの展示を通して、こうしてひとつの大きなまとまりとして場が生まれたことに、良い成果が得られたと感じています。学生は単に自分の作品をつくるだけでなく、“樹”が“木”材となり、“ぬくもり”のある作品として人の手に触れるまでの全工程に、創作のきっかけや工夫があることを実感できたと思います。また、チームで作業することの意味や大切さを肌で理解する貴重な経験にもなったと思います。
学校法人桑沢学園 東京造形大学
室内建築専攻領域 長岡 勉准教授
酒匂 克之教授(左)、 長岡 勉准教授
“とうきょうの木”の可能性を感じた
12名の有志の作品