東京の森で手作り楽器を演奏!
つくって奏でる森の音楽会 五感で楽しむ東京森林ツアー 開催レポート
2025年11月8日「つくって奏でる森の音楽会 五感で楽しむ東京森林ツアー」を開催しました。奥多摩町を拠点に木育や森林保全活動を行う「東京・森と市庭」にご協力いただき、“とうきょうの木”のスギやヒノキからオリジナルの楽器をつくり、澄んだ空気に包まれた森の中で参加者全員が即興で音を紡いだ森の音楽会の様子をリポートします。
モノづくりや音楽好きの参加者とともに「東京・森の市庭」へ
秋晴れの澄みわたる青空のもと「つくって奏でる森の音楽会 五感で楽しむ東京森林ツアー」を開催しました。集合場所のJR青梅線「奥多摩駅」には、モノづくりや音楽が好きという親子連れや、最近、森林に興味を持ち始めたという大人の参加者が集まりました。
最初に、とうきょうの木で楽器づくりをするために、奥多摩駅からバスで10分ほどの場所にある「東京・森の市庭」へと向かいました。東京・森の市庭は、奥多摩町を拠点に社有林の整備などを行いながら、東京都森林組合の加工所を借りて製材などを行っており、工務店、森のツアーガイド、木育やワークショップなど多岐にわたる活動を行っている森と木のプロ集団です。
今回、楽器づくりと音楽会をガイドしてくれるのは、東京・森と市庭の五十嵐正雄さん。参加者が到着すると、早速、製材所見学から今日のプログラムがスタートしました。
製材所見学の後、「マキンバ」&「マルタネット」づくりを開始!
製材所では、丸太の皮を剥く機械や板材や角材に製材するための機械を間近に眺め、皮を剥いたばかりの木材に触れることもできました。参加者は、まだ湿り気の残る木の感触を確かめたり、木材を削るときに出るカンナ屑を触って紙にも似た質感に驚いたり。たくさんの発見がある時間を過ごした後、いよいよ、”とうきょうの木”を使った楽器づくりです。
楽器の候補として、この日は2種類を用意。1つは「バタ材」と呼ばれる、丸太を製材する際に端材として出る、木のいちばん外側の部分の材を活用してつくる「マリンバ」ならぬ「マキンバ」、もう1つは、直径の小さい丸太でつくる「カスタネット」ならぬ「マルタネット」です。
五十嵐さんから「2種類の楽器から好きなほうをつくれること」「ペンやミツロウのクレヨンで色塗りできること」「製材や木工の際に出たさまざまな形の端材を自由に使えること」、終了時間の目安が告げられて楽器づくりがスタートしました。
それぞれの夢中を見つけて、世界にひとつの楽器が誕生
作り方の細かい説明はあえてしない。それが東京・森と市庭のスタイルだと五十嵐さんは言います。
「完成までの行程を詳しく説明している間に、子どもは飽きてしまうし、大人だってつまらないですよね。説明は最小限にして『好きにやっていいよ』という環境にすると、それぞれが夢中になれることを自分で見つけ、集中して作業に取り組みます。最初は戸惑う子もいますが、手を動かしながら好きなことに出会い、気づけば夢中になっている。だから、子どもでも途中で飽きて投げ出すことがありません。
今日のイベントもそうですが、私たちが行なっている森林にまつわるすべての活動の根底には“楽しくなかったら続かない”という想いがあります。真正面から森の大切さを伝えることも大事ですが、僕が”マキンバ”という楽器を生み出したように、新しい価値観やアイデアで楽しく木と触れ合い、その先の人生に木という存在が根付いていく活動ができれば、東京の豊かな森林を次の世代に繋いでいくことができるのでは、と思っています」
五十嵐さんが話した通り、ツアー参加者のお子様の中には最初は少し戸惑う様子を見せる子がいましたが、次第に絵を描くことや色塗りなどに夢中になり、時間とともにマキンバづくりが軌道に乗り目をキラキラと輝かせていました。大人も夢中になって、やすりがけをし、木の表面の滑らかさを追求していました。参加者が、それぞれが好きなことを見つけ、予定の時間を少し過ぎるほど楽器づくりに夢中になって取り組んでいました。
完成したマキンバとマルタネットで、森の音楽会を開催!
昼食と休憩を挟み、次は、いよいよ森の中の音楽会です。完成した楽器を携えて、演奏会の会場がある森までバスで移動しました。バスを降り、会場に向かう林道で一旦足を止め、林道を挟んで左右に広がる、整備の異なる様子の森について五十嵐さんが解説をします。
「通常、間伐は、木を植えてから20年頃に行い、その後更に20年間隔をあけて間伐を行います。みなさんの左側に見えるヒノキの森は最初の間伐からすでに20年以上が経過し、その後、手入れがされておらず木もあまり太く成長していません。森の中に太陽の光が届かないので全体的に薄暗い印象です。一方、右側に見えるスギの森は間伐を数回行っており、切り株の上を見ると、木の枝で遮られてなく、ぽっかり穴が開いたように空が見える『空開け』を見ることができます。それにより地面に日差しが届くので、コケや低木も成長して、全体的に森の中に緑が多い印象を受けると思います」
人の手が入ることで森が生き生きとすることを自分の目で確かめることができました。
再び林道を進むと、視界の開けた場所へと到着。見晴らしがよく、周囲を山々に囲まれた森のステージの脇には、絵本に登場するようなツリーハウスがありました。急な階段を前に少し緊張した様子のお子様もいましたが、一歩一歩ゆっくりと自分の力で上っていきます。子どもたちがツリーハウスに上って満足した後は、大人の番。童心に返って大人も楽しみ、ツリーハウスの上からの素晴らしい眺めを堪能しました。
演奏会の会場には、打楽器奏者で日本初のマキンバ奏者でもある”まいまい”さんと音楽仲間の”まはや”さんが待っていました。演奏会の会場には、まいまいさん用のマキンバ、吊るされた丸太を木の棒で叩いて太鼓のように音を出す手作りの楽器、地面を撫でて音を出す葉のついた枝などが用意してありました。
まず、”まいまい”さんと”まはや”さんによるマキンバの演奏から演奏会はスタート。マキンバの柔らかくも力強い音色で会場は一気に温まり、みんなの気持ちがひとつになりました。続いて、一人ひとりが奏者となり、自分のつくった楽器を奏でて、音で自己紹介。音に込められた個性が光り、他の参加者からは拍手が送られました。
そして、いよいよ全員での合奏です。事前の打ち合わせはまったくなかったにもかかわらず、”まいまい”さんの指揮に導かれ、左右でパートを分けたり、ソロ演奏をしたり、音に強弱をつけたり。ひとつの楽団のように音楽が奏でる姿は圧巻で、とても感動的な瞬間でした。
手づくり楽器の演奏の後は、会場に置かれていた木の太鼓や枝なども自由に使われ、途中には鳥の鳴き声までもが音楽のスパイスとなり、この日この時間だけの素敵な音楽が森の中に響き渡りました。
「その辺に落ちている木が、ちょっとの工夫で宝物になる。そんな経験が今日できたことと思います。こうやって木で遊ぶことも森をよくしていくことの一環です。みんなで奏でた森の音楽会が木とのつながりが生まれるきっかけになったら、本当に嬉しいです」と五十嵐さん。
この日、みんなで生み出した音楽、森の中で見た風景は、参加者全員の記憶に残り続けることでしょう。




















