2025年6月、東京都青梅市を中心に林業を営む中島林業協力のもと、「東京の森で林業体験! 〜1本の木からオリジナルアイテムをつくろう〜」を開催しました。
中島林業が管理する山では、伐り出す木を参加者が選木し、力を合わせて伐倒。伐倒した木を使い、思い思いのオリジナルアイテムを制作しました。
拠点となる中島林業から体験がスタート
当日の朝、小雨が降る東京都青梅市のJR青梅線東青梅駅に、親子づれをはじめとする幅広い年齢の参加者が続々と集合。その表情は、これから始まる自然とのふれあいへの期待がにじんでいます。全員が揃うと、中島林業の作業場へとバスで移動しました。
作業場では、ガイドを担当する中島林業代表の中島大輔さんが、1日をともに過ごすスタッフの紹介と体験の流れを説明しました。説明が終わる頃には心配されていた雨も上がり、出発の準備を整えて、いよいよ体験のスタートです。
作業場から体験場所までは、30分ほどの山登り。時折、日が差すほど天候が回復し、歩き慣れない急な斜面が体力を奪いますが、ガイドスタッフの手厚いサポートのもと、それぞれのペースで歩を進めます。
ガイドスタッフには、普段から森林ボランティアとして活動している人、木材の加工や集成材の工場で働いている人など、森と木のスペシャリストが勢ぞろい。登山中は参加者から出た植物や生き物に関する質問に答えるなど、知識をたくさん披露していただきました。
中島林業の中島大輔さん。体験の流れを説明。
伐倒する地点までは急な斜面もあり、林業に従事する方の大変さを体感。
林業体験のためのレクチャーを受ける
伐採の体験場所に到着したら、伐り出す木を決める「選木」を参加者に体験してもらうため、スタッフのみなさんが必要な知識をレクチャーします。
参加者が立っている両脇には、同じ年代に植えられたため同じくらいの高さ、太さに育ったヒノキが並んで生えています。
しかし、よく見ると左右の林では、景色が大きく異なります。片側は間伐が行われ、日が差すので地面にはシダなどの草が生えています。もう片側はほとんど人の手が入っていないため木が密集し、日の光が地面に届かず草も生えていない、薄暗い雰囲気です。
視線を上に向けると、木々の間にぽっかりと穴が空いたように空が見える場所があります。これは1本の木を伐ったことによりできた空間で、これがあることで太陽の光が地面に届くようになります。
木の根元に視線を移すと、鹿が角や体をこすりつけて皮がめくれた木が何本かあることがわかります。傷ついた木は弱っていき、いずれ枯死する可能性が高くなります。
これらの情報を伝え、参加者同士でどの木を伐るか相談してもらい、無事に選木できました。
間伐され太陽の光が届く森は、地面が一面の緑で覆われていて美しい。
選木をしたら、伐倒・運び出しを体験
次は木を伐り倒す「伐倒」の準備です。参加者全員でロープを引っ張って伐倒するので、スタッフが木にロープを引っ掛け、滑車を取り付けます。
その後、木の根本に「受け口」と「追い口」を入れます。実際の林業の現場ではチェーンソーで行う作業ですが、この日はノコギリでの作業を体験してもらいました。木が倒れる方向を考慮して慎重にノコギリを入れる場所を決めたら、交代でノコギリを往復させて少しずつ受け口を作っていき、最後はスタッフが伐倒に適した受け口と追い口の形状を整えました。
準備が整ったら、安全確保のための注意点を再確認し、いよいよ伐倒です。全員で力を合わせてロープを引っ張ると、大木がゆっくりとしなりながら倒れていきます。徐々に受け口を入れた根本あたりがミシミシと音を立て、見事に伐倒できました。その迫力に、参加者からは歓声と拍手が沸き起こりました。
ノコギリを使って木の根本に「受け口」「追い口」を入れていきます。
ロープの牽引による伐倒を体験。
伐倒したのはヒノキで全長19m、直径は一番太いところで20cmほど。林業のプロの手を借りて、枝払いをしたのちに1.8mの丸太にします。その間、参加者は木の年輪を数えて樹齢60年ほどであることを知ったり、切り株のヒノキの香りを楽しんだりしていました。
1.8mにカットされた丸太の重さは60〜80kg。それをみんなで協力しながら軽トラックの荷台へと運ぶ搬出作業を行い、林業体験は終了です。
1.8mにカットした丸太と払った枝もアイテムづくりに使うため、軽トラックで運びます。
切り株の表面からはヒノキのいい香りが漂う。年輪を数えると伐倒したヒノキは樹齢60年ほど。
昼食後、オリジナルアイテムを制作
丸太を製材機でカットし板材に加工する様子を見学したのち、いよいよ、自分だけのオリジナルアイテムの制作が始まりました。
伐り出したばかりの木材(とうきょうの木)は水分をたっぷりと含んでおり、木の皮を剥ぐと瑞々しい感触が楽しめます。また、コツを掴むと皮がスルッと剥けるのが楽しく、子どもも大人も夢中になって作業していました。
直径12cmほどの幹でも丸太をノコギリでカットするのは、慣れない人にとってはかなりの重労働ですが、オリジナルアイテムの制作に向けて諦めることなく励んでいました。
機械で丸太を角材にカットする様子を見学。
木の皮を剥くことに夢中になり、黙々と作業に取り組む子どもたち。
細い丸太でもノコギリで切り落とすのは大変な作業。
締めくくりは、2時間30分ほどかけて出来上がったたくさんのアイテムのお披露目会。丸太に穴を開けて仕上げた靴べら立て、丸太にヒノキの枝を刺した小物かけやオブジェ、鍋敷、テーブル、ティーライトキャンドルホルダーなどの作品がずらりと並び、最後は参加者全員で記念撮影をして終了しました。
午前中は東京の森に入り、なかなか経験することができない選木・伐倒・搬出という林業体験、午後は伐り出したばかりの木に触れるという貴重な体験やオリジナルアイテム制作を通じて、1本の木が私たちの生活を豊かにしてくれることを肌で感じていただける機会になりました。

とうきょうの木に興味はあるけれど、東京の森林まではなかなか行けないという方は、ぜひ、新宿にあるTOKYO MOKUNAVIのショールームへ。こちらでもとうきょうの木を使った製品に実際に触れ、林業についても知ることができます。